Work guide
10年後、自分がどのように仕事をしているのか、想像したことはありますか?変化の激しいIT・Web業界では、2~3年後のキャリアは描けるけれど、その先がイメージできない方もいらっしゃるのではないでしょうか?
そこで、未経験からWeb業界に入られて15年、現在は株式会社 テイ・デイ・エスのシニアゼネラルマネージャー兼Webプロデューサーとしてご活躍中の池田 圭一さんに、これまでのキャリアとWeb業界でのキャリアアップのためのヒントを伺いました。
株式会社 テイ・デイ・エス
シニアゼネラルマネージャー/Webプロデューサー
経歴
未経験からWeb業界に入り、2004年に派遣社員としてWeb制作会社「株式会社 テイ・デイ・エス」に就業。2005年に正社員に登用され15年、Webデザイナー・Webディレクター・プロジェクトマネージャーを経て、現在はシニアゼネラルマネージャー兼Webプロデューサーとして活躍中。
Webディレクターとして参画した東京海上グループのイーデザイン損害保険株式会社の「自動車保険1クリック概算保険料見積もり」が2019年度グッドデザイン賞を受賞。
株式会社 テイ・デイ・エス
1979年創業の企画デザイン会社。「デザインに戦略性を、ロジックに創造性を」をコンセプトに、ブランディングやコーポレートツールなど、さまざまな制作物をWeb・紙に限らず幅広く手掛ける。
―― 池田さんがWeb業界に入られたきっかけを教えてください。
以前は博物館などの展示施設の施工管理の仕事をしていました。業務上、グラフィックや情報機器といったものに触れる機会が多かったんですよ。その中で、「動き」や「音」を使ったインタラクティブ *1 な表現ができるWebの世界に進んでいきたいという気持ちが生まれたんです。
そこで、ウェブスタッフのグループ会社であるインターネット・アカデミー *2 に通うことにしました。スクール卒業後、ウェブスタッフの紹介で派遣就業したのが、今働いているテイ・デイ・エスです。
派遣社員というと仕事の範囲が限定されていると思われがちですが、僕は遠慮せずに何でもチャレンジさせてもらっていました。すると主体性を持って働く姿が評価され、幅広い業務を任せてもらえるようになったんです。テイ・デイ・エスで働くようになって約1年後には、正社員に登用されました。
*1 インタラクティブとは「双方向の」という意味。ユーザーの操作によってページの表示が変化することは、Webの魅力のひとつです。
*2 インターネット・アカデミーは、Webデザインやプログラミングなど、Web・ITが学べる日本初の専門スクールです。
―― これまでのキャリアアップの中で、気を付けていたことはありますか?
普段からキャリアアップを意識していたわけではありませんが、自分の役割やできることに「ここまで」という線を引かないことは心掛けていました。知らないことであっても、調べれば理解できることも多いですよね。できないことをできないままで終わらせるのではなく、やってみる。すると今の自分をほんの少しだけ飛び越えられるような、少し成長したような感覚がありました。
たとえば、僕は最初はWebデザイナーとして就業していました。ですが、Webデザイナーという役割にとらわれずに、サイトのデザインはもちろんのこと、ディレクションやコーディング、インタラクティブなFlashコンテンツの作成などもやりましたね。
知らないことやできないことでも、少し頑張ればできることであれば、躊躇せずにやってみる。そういうことを繰り返していくうちに、気付いたらいろいろなことができるようになっていました。
―― Webデザイナーとしてスタートされたとのことですが、これまでのキャリアを積まれる中で、ご自身にとってターニングポイントになった出来事はありますか?
Web業界に入って3年目の2007年ごろに任された、100人規模の大きなプロジェクトですね。デザインを統括する仕事の責任者として、1年半ほどクライアント企業に常駐し、さまざまな方と一緒にプロジェクトを進めていったんです。これが、自分のキャリアアップにつながった案件だったなと感じています。
実は前職である博物館の施工管理の仕事は、Webのプロジェクトに少し似ているんです。造作、造形、グラフィック、映像…などといった、さまざまな工種の多くの職人さんと日々コミュニケーションを取りながら、ひとつの施設を作り上げるといったことをしていたんですよね。
このプロジェクトでも、周囲とコミュニケーションをとりながら協力していくことで、完成させることができました。大きなプロジェクトでマネジメントをするのは初めてのことでしたが、前職の経験を活かしながら自分なりにチャレンジしてみたことが、次のステップにつながったのかなと思います。
これを機に、さまざまなプロジェクトのWebディレクターやプロジェクトリーダーを任されることが多くなりました。
―― 現在のようなマネージャーといったポジションを任せられるようになったのは、いつごろですか?
2012年ごろ、Web業界に入って7~8年目になったころだったと思います。当時はスマホが普及し始めのころで、テイ・デイ・エスでもスマートフォン用のコンテンツやアプリケーションに関する業務を担当するチームが新設され、そのチームのリーダーを任されました。その時期から、マネージャーとしてチームを預かるようになったように記憶してます。
マネージャーという立場になってからも、さまざまな仕事に関わってきました。テイ・デイ・エスでは、クライアントの課題抽出から、コンサルティング、デザインツールへの落とし込みまで、幅広い仕事を取り扱っているんです。そのため、広告・プロモーション活動のお手伝いをしたり、Webサイトやコンテンツの企画を手掛けたりしてきました。
―― これまでのお仕事の中で特に印象に残っているものを教えてください。
2019年に関わった東京海上グループのイーデザイン損害保険株式会社の「自動車保険1クリック概算保険料見積もり」のサイトは、とても印象に残っています。
クライアントであるイーデザイン損害保険株式会社の方のモチベーションがとても高かったので、自分たちもクライアントと一緒に走るような感覚でした。クライアントと一緒になってサイトを作り上げることができたことに、とてもやりがいを感じましたね。
できあがったサイトはクライアントに非常に高く評価され、「このサイトをグッドデザイン賞に応募したいね」と言っていただきました。結果、このサイトは2019年度グッドデザイン賞を受賞しています。
仕事を通じてすごくいい経験ができた出来事だったと感じています。
―― Web業界は変化が激しく、日々の情報収集が大変ですよね。池田さんはどのように情報収集していらっしゃいますか?
昔は、やはり自分で好きなサイトを見たり、記事を読んだりして、情報収集していました。
今はとにかく外に出て、人と会うことは心掛けています。たとえばセミナーに参加して、話を聞いてみたり。クライアントと話して、そこで話題になっていることを調べてみたり。なるべく外に出る機会を作ることが、新しいことを得るきっかけになっている気がしますね。
―― 人と会って情報収集することが新たな経験のきっかけになった、具体的なエピソードはありますか?
以前Webのイベントに参加したときに、Adobe XDをプロジェクトマネジメントで活用する方法を発表されている方がいたんです。それに感銘を受けて、実際に社内のプロジェクトで導入してみたら、体系的に運用することができました。
社外の勉強会でAdobeの担当者の方とお会いする機会があり、この話をしたんです。すると、「イベントで話してくれませんか?」と声をかけていただき、2018年の夏にAdobe主催の「Adobe XD MEETUP #6」という勉強会に、講師として登壇しました。
イベントや勉強会に自分から出掛けて行ったからこそできた体験ですね。
―― 池田さんが今後やっていきたいと思っていることがあれば教えてください。
自分の立場がいろいろと変わっていく中で、会社の経営や組織のようなものをデザインしていきたいなという気持ちはどんどん大きくなってきています。
僕は世の中のものは全部デザインされていると思っているんです。メールの内容や業務で提出するリストであっても、何か意図をもっているものであれば、全てデザインですね。どんなものでも、相手に効果的に、かつわかりやすく伝えられるかを意識することが大切だと思っています。
「組織をデザインする」とは、会社をどんな組織にしていくかという、組織作りの部分です。マネジメントをすることが多くなった中で、組織をデザインする方向にシフトチェンジしていきたいなと、今は考えています。
―― 組織のデザインやマネジメントの中で意識していらっしゃることはありますか?
たとえば、自分の経験から、キャリアを積んでいくためには「今の自分を少し飛び越えること」が大切だと感じています。自分のできることを決めつけずに、やったことがないことにもチャレンジするということです。
ただ、自分からできないことにチャレンジするのを苦手にしている人もいるんですよね。そのような人には、現状を飛び越えるちょっとしたきっかけをつくってあげることも、重要なマネジメントとして意識するようにしています。
―― 具体的に、どのようにきっかけをつくっているのですか?
とにかく、「巻き込むこと」ですね。
まずは日頃からチームメンバーとなるべく関わることを心掛けています。僕は、マネージャーであってもプレイヤー的な目線があったほうが、周囲からの信頼を得やすいと思っているんです。普段から、僕自身が何かチャレンジしていることを周囲に見せることで、その人の意識を突っつくことができるかなと思っています。
先日ウェブスタッフで開催された1on1セミナー *3 を参考に、毎週1on1も実施しています。毎週やっているとどうしても世間話みたいになってしまうところはありますが、それでもやはり気付くことは多いですね。メンバーとの1on1は、いろいろと深く考えるきっかけになっていると感じますよ。
*3 2019年10月にウェブスタッフで開催した「クリエイターのエンゲージメント率がみるみる上がる!ヤフー独自1on1の進め方」。ヤフー株式会社 クリエイター人財戦略室の田部井氏にご解説いただきました。
―― これからWeb業界を目指そうと勉強されている方も多くいらっしゃいます。池田さんがWebスクールで学ばれていたときに心掛けていたことはありますか?
スクールでは、総合的に学ぶことができました。ただ、スクールで学ぶだけでスキルが身に付くわけではなかったかなという実感もあります。
僕は好きでWebについて勉強していたこともあり、授業が終わった後に、習ったことを復習しながら「こうやったらどうなるだろう?」といった視点で、自分で色々と試してみていました。
あとは、自分でやってみて分からなかったことは、次の授業のときに先生に聞いていました。「これやってみたけれど、ちょっと分からなくて、どうやるんですか?」といった風に。
Web業界で頑張っていきたいと思っているのであれば、単に授業を受け身で聞くのではなくて、自分でやってみることが一番かなと思います。
―― 最後に、Web業界でキャリアアップしていきたいと考えている方に、ひと言お願いします!
自分を成長させるためには、今の自分の役割やできることはここまでと線を引かないことが大切だと思います。たとえば、自分に与えられている業務範囲を少し広げてみる、やったことがないことでもチャレンジしてみるといったように、今の自分を少しだけ飛び越えてみると良いのではないでしょうか。
最初から、たくさん飛び越える必要はないと思いますよ。ほんの少し、また少し、今度はまた少し…そういったことを繰り返していけば、気付くとちょっとずつ成長していくと思います。
今派遣で働いている方でも、自信を持って意見を言ってみるといいんじゃないでしょうか。派遣だからといって変に線を引かないで、臆せず提案をしていくといいと思います。提案をしてくれる人材は、企業にとっても貴重な存在です。些細なことでも主体的に意見を言う、そのことの繰り返しでキャリアが見えてくるのではないかと思いますよ。
―― 貴重なお話をありがとうございました!
(関連リンク:派遣社員から正社員になって今のキャリアを築いた池田さん。派遣社員のあいだに心掛けたことは?)
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